磁場と超伝導 科学技術週間

解説「一家に1枚 磁場と超伝導」

磁場は宇宙全体にわたってあらゆるところに強かれ弱かれ存在し、私たちは地球という巨大な磁石が生み出す弱い磁場のなかで生活しているといえます。また、人類は磁場の強さを人工的に変えることや、磁場を精密に計測することによって生活を豊かにしてきました。今日の医療、情報、産業、輸送など他分野での高度な技術や先端科学研究には、磁場を使う、磁場を測る技が駆使されています。計測が可能な微弱磁場から最大の磁場を持つ中性子星まで、磁場の強さの範囲は20桁をはるかに超える非常に広いものです。

さて、子どもたちは永久磁石が付いたおもちゃや教材などで磁石のふるまいを体験しています。しかしながら、温度や光(可視光域)などと異なり、磁場の強弱は体感的に知ることができず、子どもたちの磁場への理解は、磁石にはN極、S極があってくっ付いたりくっ付きにくくなったりする、鉄は磁石に引き付けられる、といった依然として“不思議”なレベルにとどまっています。

ところで、強い磁場を作り出す電磁石や微弱な磁場の計測装置の多くに超伝導体が用いられています。超伝導体は直流電流に対して抵抗がゼロであることから、超伝導体でできた電磁石に高密度で大電流を流すことができ、強い磁場が発生します。このとき電力の消費がほとんどないだけでなく、電磁石の両端を超伝導体の線でつなぐと、永久(に衰えない)電流が流れる回路となり、磁場の強さは一定になります。このような原理の超伝導電磁石は、医療用のMRI装置や超伝導リニアなど多くの用途に使われています。一方、超伝導体の中で磁束が量子化されるという性質を生かした超精密な磁気計測技術は、心磁計や脳磁計などに利用されています。このように磁場を操り測る技術は超伝導体の利用によって大きく発展してきました。今年はちょうど超伝導現象の発見から100周年にあたります。この記念の意味も含めて、磁場と超伝導のマップを作成しています。

マップでは左下から右上に向かって磁場が強くなるように軸を描き、その上方には自然界に存在する磁場、生活空間における磁場、超伝導以外の材料を用いた電磁石の応用などを、下方には超伝導体を用いた装置、設備等の例を表しました。子どもたちが親しみやすく磁場を理解できるように、身近な現象や用品から、夢の未来技術まで、適当な題材を選定しています。次の世代を支える子どもたちが磁場の存在やその利用を身近に感じ、超伝導応用に夢を抱くならば、このマップが今後の科学技術振興に対する一助になると期待しています。

最後に、文部科学省関係者の方々、本マップの作成に直接的・間接的に携わってくださった全ての皆様、そして画像を提供して頂いた方々に厚く御礼申し上げます。

東京大学 下山 淳一